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意識低い系の読書メモ

文学・会計学が中心

鎌田浩毅「火山はすごい」

火山学者が一般向けに火山研究について書いたエッセイ。1章1火山。
自身が火山の美しさに感動した話や、研究仲間を火砕流で失った話、今まさに噴火している火山の将来予測をリアルタイムで行った話・・・
火山全般について、これというテーマを絞らず、時に専門的な説明も織り混ぜつつ、自分の体験を語っている。
科学書だが、どこか文学的な雰囲気もある。レヴィ・ストロースの「野生の思考」になんとなく似ている。
 
読んでいて強く思ったのは、火山研究という一見マニアックな活動が、実に多様な分野に関わっているということだ。
中学生のころ勉強したような、地層から過去の火山活動を読み解く火山地質学だけが火山研究ではない。
電磁気などの方法から火山体の地下構造を明らかにする火山物理学や、地下水や火山ガスの分析を行う火山化学もまた火山研究である。
 
また、火山が噴火すれば災害に直結しうるため、社会との関わりが強く、火山は社会学でもある。
火山の噴火予測は地質や物理や化学のデータから判断する総合的なものであり、100%の予測は不可能だ。
しかし、どこまでを警戒区域に設定し、どこでそれを解除するのかという現実の問題は、するかしないかのどちらかしかない。
もちろん大事に越したことはないが、避難には実際的な経済負担が伴う。なんでもかんでも避難させるわけにはいかないという現実がある。
 
また、火山活動は何万年という壮大なスケールで活動しているため、過去の被害状況を調べるためには、古文書を調べることもある。
その意味で、火山は文学でもあるのである。
 
このように、火山研究は、サイエンスであり、現実社会を動かすものであり、歴史であり、また将来予測でもある。
そして、富士山のように、その美しさは人を惹きつけるものでもある。
そんないろいろな思いを全部ひっくるめて、「火山はすごい」という潔いタイトル。まさに本書の内容をスバリ言い表しているのではないだろうか。